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1節 石綿含有建材の除去工事/9章 環境配慮改修工事/平成31年版 公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)

9.1.1 一般事項

(1) 適用範囲
この節は、労働安全衛生法に基づく石綿を含有する、石綿含有吹付け材、石綿含有保温材等(石綿を含有する保温材、耐火被覆材及び断熱材)及び石綿含有成形板(以下「石綿含有建材」という。)の除去工事に適用する。
また、1章[各章共通事項]と併せて適用する。

(2) 基本要求品質
石綿含有建材は、安全かつ完全に除去すること。

(3) 施工一般
大気汚染防止法、廃棄物処理法、労働安全衛生法、石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号。以下「石綿則」という。)その他石綿処理に関する諸法令等に基づき、施工を行う。

(4) 仕上げ工事
石綿含有建材除去後の仕上げ工事については、特記による。

(5) 石綿含有建材の調査は、次による。

(ア) 調査範囲、既存の石綿含有建材の調査報告書の貸与等は、特記による。
なお、分析による石綿含有の調査を行う場合は、「建材中の石綿含有率の分析方法について」(平成18 年8月21 日 基発第 0821002号、最終改正 平成28 年4月 13日 基発 0413 第3号)に基づく方法により、分析方法は特記による。

(イ) 調査は、目視、設計図書、石綿有無の調査報告書等により確認し、調査結果を取りまとめ監督職員に提出する。

(ウ) 調査の結果、設計図書と異なる場合は、監督職員と協議する。

(6) 石綿粉じん濃度測定の適用、測定方法、測定時期、測定場所及び測定箇所数は、特記による。

9.1.2 除去工事共通事項

(1) 専門工事業者
石綿含有建材の除去を直接行う専門工事業者については、工事に相応した技術を有することを証明する資料を、監督職員に提出する。

(2) 石綿作業主任者
石綿含有建材の除去に当たり、石綿則に基づき、石綿作業主任者を選任する。
なお、石綿作業主任者は、石綿作業主任者技能講習修了者又は平成18年3月以前の特定化学物質等作業主任者技能講習修了者とする。

(3) 除去作業者
石綿含有建材の除去に従事する作業者 (以下「除去作業者」という。) は、石綿則に基づく特別の教育を受けた者とする。
なお、除去作業者は、一般健康診断、石綿健康診断及びじん肺健康診断を受診した者で、肺機能に異常がない者とする。

(4) 特別管理産業廃棄物管理責任者
廃棄物処理法に基づき、特別管理産業廃棄物管理責任者の資格を有する者を配置する。
ただし、石綿含有成形板の除去工事を除く。

(5) 施工区画
石綿含有建材の除去に当たり、直接除去を行う作業区域 (場所) 、前室、洗身室及び更衣室の3室で構成するセキュリティゾーン、廃棄物保管場所等で、除去工事に直接又は間接に関係する箇所の区画を行う。

(6) 表示及び掲示は、次による。

(ア) 石綿則に基づき、喫煙及び飲食の禁止並びに関係者以外立入禁止について、作業場の見やすい箇所に表示を行う。
また、大気汚染防止法に基づき、事前調査結果の概要を公衆が見やすい場所に掲示する。

(イ) 労働安全衛生規則に基づき、石綿作業主任者の氏名及びその者に行なわせる事項について、作業場の見やすい箇所に掲示を行う。

(ウ) 石綿則に基づき、石綿含有建材の有無の事前調査結果の概要、石綿を取り扱う作業場であること、石綿の人体に及ぼす作用、石綿取扱い上の注意事項及び使用すべき保護具について、作業に従事する労働者が見やすい箇所に掲示を行う。

(エ) 「建築物等の解体等の作業を行うに当たっての石綿ばく露防止対策等の実施内容の掲示について(平成17年8月2日 基安発第0802001 号)」に基づき、「建築物等の解体等の作業に関するお知らせ」を労働者及び周辺住民の見やすい場所に掲示する。

(オ) 特定粉じん排出等作業を行う場合は、届出の内容を(エ)の掲示に追記する。

(カ) 石綿則に基づき、運搬又は保管する場合の容器等に石綿であること及び取扱い上の注意事項を表示する。

(7) 保護具等は、次による。

(ア) 作業者は、石綿則に基づき、作業内容に応じ、作業に適した呼吸用保護具を使用する。

(イ) 作業者は、半面形の呼吸用保護具を使用する場合は、必要に応じて、保護めがね又はフードを併用する。

(8) 保護衣、作業衣は、次による。

(ア) 作業者は、石綿則に基づき、保護衣又は作業衣を使用する。
ただし、隔離空間内で作業する場合は、保護衣を使用する。

(イ) 保護衣は、JIS T 8115(化学防護服)の浮遊固体粉じん防護用密閉服(タイプ5)同等品以上のものとし、原則として、使い捨てタイプのものを使用する。

(ウ) 作業衣は、石綿が付着しにくく、付着した石綿が容易に除去できるものとする。

9.1.3 石綿含有吹付け材の除去

(1) 石綿含有吹付け材の除去に伴い、石綿の作業場から外部への飛散防止及び処理を必要としない壁、床、機器等への汚染防止のため、石綿則及び大気汚染防止法に基づき、隔離する。
隔離の方法等は、次による。

(ア) 壁面、床面等にプラスチックシート等(以下「隔離シート」という。)を接着テープ等で隙間なく接合して貼り付ける。
なお、隔離シートは、壁面は厚さ 0.08mm 以上、床面は厚さ 0.15mm 以上(2枚重ね)のもので、作業場と他の場所を確実に隔離できるものとする。

(イ) 隔離した作業場への出入りによる石綿粉じんの外部への漏洩を防止するため、セキュリティゾーンを設置する。

(ウ) 施工区画内には洗眼及びうがいのできる設備を設ける。

(エ) 洗身室にはエアシャワー設備を設ける。

(オ) 隔離した作業場及びセキュリティゾーン内は、集じん・排気装置を使用し、石綿粉じんを捕集するとともに負圧を維持する。
集じん・排気装置は、石綿粉じんの大気への飛散を防止するためのHEPAフィルタ又はこれと同等以上の性能を有するエアフィルタ付きの設備とする。

(カ) 集じん・排気装置は、使用する場所において、使用前に点検し、漏れがないことを確認する。

(キ) 作業開始後、直ちに粉じんを迅速に測定できる機器により集じん・排気装置の排気口からの漏洩の有無を確認し、異常が認められたときは、直ちに作業を中止し、必要な措置を講ずる。

(ク) 作業中に隔離した作業場及びセキュリティゾーン内が負圧に保たれていること並びに集じん・排気装置からの漏れがないことを定期的に確認する。

(ケ) (カ)から(ク)までの確認を行った日、確認方法、確認結果等を記録し、工事終了まで保管する。

(コ) 隔離した作業場の内部で除去作業する場合は、電動ファン付き呼吸用保護具又はこれと同等以上の性能を有する呼吸用保護具を使用する。

(2) 工法は、次による。

(ア) 石綿含有吹付け材の除去工法は、特記による。
特記がなければ、次による。

(a) 石綿含有吹付け材を粉じん飛散抑制剤により湿潤化した後に、除去する。
なお、粉じん飛散抑制剤は、除去工事によって発生する石綿粉じんの飛散を抑制するための薬液とする。

(b) 除去に当たり、粉じん飛散抑制剤の効果を確認し、ケレン棒等により石綿含有吹付け材を掻き落とす。

(c) 除去作業終了後、除去面に石綿含有吹付け材が残っていないか、目視確認を行い、残っていた場合は、再度湿潤化し、ワイヤブラシ等で残さずに除去を行う。

(d) (c)の後に、除去面に粉じん飛散防止処理剤を散布する。
なお、粉じん飛散防止処理剤は、石綿含有吹付け材の層からの石綿粉じんの飛散を防止するための薬液とする。

(イ) 除去した石綿含有吹付け材等の梱包は、石綿則及び廃棄物処理法に基づき、次による。
なお、石綿含有吹付け材の飛散防止措置は湿潤化又は固形化とし、特記による。
特記がなければ、湿潤化とする。

(a) 除去作業場所において、厚さが0.15mm 以上のプラスチック袋等の耐水性の材料の中に入れ、袋の中の空気をよく抜いて、密封する。
この際、石綿含有吹付け材等が湿潤化又は固形化していることを確認する。

(b) 前室で、高性能真空掃除機等により、プラスチック袋等の耐水性の材料に付着している粉じんを除去する。
高性能真空掃除機は、HEPAフィルタ又はこれと同等以上の性能を有するエアフィルタを装着した真空掃除機とする。

(c) 前室又は洗身室で、さらに、厚さが0.15mm以上のプラスチック袋等の耐水性の材料をかぶせ、二重に梱包して密封し、「廃石綿等」であることの表示を行う。

(3) 除去した石綿含有吹付け材等の保管、運搬及び処分は、廃棄物処理法に基づき、次による。

(ア) 石綿含有吹付け材等の保管は、次の(イ)によるほか、1.3.12[発生材の処理等](4)(ウ)による。
また、運搬及び処分は、次の(ウ)及び(エ)によるほか、1.3.12 (4)(エ)による。
なお、運搬又は処分を委託する場合は、委託契約書及びマニフェストに、固形化又は安定化の方法、廃石綿等が含まれること等を記載する。

(イ) 石綿含有吹付け材等を工事現場外へ搬出するまでの間、現場に保管する場合は、一定の保管場所を定め、ほかの建設副産物等と分別して保管し、シート等で覆うなど、飛散防止措置を講ずる。
また、保管場所には、廃石綿等の保管場所であることの表示を行う。
なお、周辺の生活環境に影響を及ぼさないようにするとともに、分別した廃棄物の種類ごとに、廃棄物処理法の「特別管理産業廃棄物保管基準」に基づき、保管する。

(ウ) 石綿含有吹付け材等の運搬車及び運搬容器は、石綿含有吹付け材等が飛散及び流出するおそれのないものとする。
また、運搬車両の荷台に覆いをかけるなど飛散防止措置を講ずる。

(エ) 石綿含有吹付け材等の処分は、次の(a)又は(b)により、処分方法は特記による。

(a) 埋立処分の場合は、特別管理産業廃棄物として、管理型最終処分場の一定の場所で埋立処分する。

(b) 中間処理の場合は、都道県知事等から設置許可を受けた溶融施設において溶融又は環境大臣の認定を受けた無害化処理施設において無害化処理を行う。

(4) 確認及び後片付けは、次による。

(ア) 除去作業終了後、高性能真空掃除機で床等の清掃を行う。

(イ) 除去が十分行われたことを、原則として、監督職員の立会いのもと、確認する。

(ウ) 隔離シートに付着した石綿等の粉じんの再飛散を防止するために、シート全面に、粉じん飛散防止処理剤を散布する。
必要に応じて、粉じん飛散抑制剤を空気中へ散布して、石綿を沈降させる。

(エ) 隔離シートの撤去は、集じん・排気装置で十分に吸引・ろ過し、隔離空間内部の空気中の総繊維数濃度を測定して、石綿等の粉じんが処理されたことを確認した時点で行う。
なお、取り外した隔離シートは、粉じん付着面を内側にして折りたたむ。

(オ) 設置された足場及び仮設材は、解体前に足場等に付着した石綿等の粉じんを高性能真空掃除機で十分に清掃する等により、付着したものを除去した後、解体し、搬出する。

(カ) 隔離シート、保護衣、フィルタ等の廃棄物は、(2)(イ)により、飛散防止措置を講ずる。

(キ) 隔離シート、保護衣、フィルタ等の廃棄物の保管、運搬及び処分は、(3)による。

(ク) 後片付け終了後は、高性能真空掃除機で床等の清掃を行う。

9.1.4 石綿含有保温材等の除去

(1) 石綿含有保温材等の除去は、石綿則及び大気汚染防止法に基づき、次により、除去方法は特記による。

(ア) 破砕して除去する場合は、9.1.3 による。

(イ) 原形のまま、手ばらしの場合は、(2)から(5)までによる。

(2) 作業場の区画は、次による。

(ア) 石綿含有保温材等の除去に伴い、作業場から外部への石綿の飛散防止のため、養生シート等を用いて区画する。

(イ) 石綿含有保温材等の除去作業を行う施工区画内は、当該作業者以外立入禁止とする。

(3) 工法は、次による。

(ア) 石綿含有保温材等の除去は、9.1.3(2)(ア)(a)により、原形のまま、手ばらしで行う。

(イ) 除去後の処理は、9.1.3(2)(ア)(d)による。

(ウ) 除去した石綿含有保温材等の廃棄物は、9.1.3(2)(イ)により、飛散防止措置を講ずる。

(4) 除去した石綿含有保温材等の保管、運搬及び処分は、9.1.3(3)による。

(5) 確認及び後片付けは、9.1.3(4)の(ア)、(イ)及び(オ)による。

9.1.5 石綿含有成形板の除去

(1) 石綿含有成形板等の除去は、石綿則に基づき、原形のまま、手ばらしで行い、作業場の区画は次による。

(ア) 石綿含有成形板の除去に伴い、作業場から外部への石綿の飛散防止のため、養生シート等を用いて区画する。

(イ) 石綿含有成形板の除去作業を行う施工区画内は、当該関係者以外立入禁止とする。

(2) 工法は、次による。

(ア) 石綿含有成形板の除去は、散水により湿潤化した後、原形のまま、手ばらしで行う。
なお、やむを得ず破砕等をしなければならない場合は、監督職員と協議の上、湿潤剤等の噴霧、散水等により十分に湿潤化した状態で作業を行う。

(イ) 除去した石綿含有成形板の集積及び積込みに当たり、高所より投下しないことのほか、粉じんの飛散防止に努める。

(ウ) 石綿含有成形板は、湿潤化のうえ、原形のまま、丈夫なプラスチック袋等に入れるなど、飛散防止の措置を講ずる。

(3) 除去した石綿含有成形板の保管、運搬及び処分は、次による。

(ア) 石綿含有成形板の保管は、次の(イ)によるほか、1.3.12[発生材の処理等] (3)(ウ)による。
また、運搬及び処分は、次の(ウ)及び(エ)によるほか、1.3.12(3)(エ)による。
なお、運搬又は処分を委託する場合は、委託契約書及びマニフェストに、石綿含有産業廃棄物が含まれることを記載する。

(イ) 石綿含有成形板を工事現場外へ搬出するまでの間、現場に保管する場合は、一定の保管場所を定め、ほかの建設副産物等と分別して保管し、シート等で覆うなど、飛散防止措置を講ずる。
また、保管場所には、石綿含有産業廃棄物保管所であることの表示を行う。
なお、周辺の生活環境に影響を及ぼさないようにするとともに、分別した廃棄物の種類ごとに、廃棄物処理法の「産業廃棄物保管基準」に基づき、保管する。

(ウ) 石綿含有成形板の運搬車及び運搬容器は、石綿含有成形板が飛散及び流出するおそれのないものとする。
また、運搬車両の荷台に覆いをかけるなど飛散防止の措置を講ずる。

(エ) 石綿含有成形板の処分は、次による。

(a) 石綿含有せっこうボードは、管理型最終処分場で埋立処分する。

(b) 石綿含有せっこうボードを除く石綿含有成形板の処分は、埋立処分又は中間処理とし、適用は特記による。

① 埋立処分の場合は、石綿含有産業廃棄物として、安定型最終処分場の一定の場所で埋立処分する。

② 中間処理の場合は、9.1.3(3)(エ)(b)による。

(4) 確認及び後片付けは、9.1.3(4)の(ア)、(イ)及び(オ)による。

このページは、国土交通省のWebサイトで公開されている 国土交通省大臣官房官庁営繕部 公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)平成31年版 をWebページ化したものです。

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